感情的なスタッフと師長との関係修復に失敗した主任の事例(Hチーム)

1.事例紹介

私は、特別病棟から緩和ケア病棟移行した夏にファーストの研修に参加し、病棟不在であった。その間に起こった師長とベテランスタッフAとその取り巻きスタッフの対立を修復しようとした事例である。

特別病棟(内5床は緩和ケア病棟)は病院の中でも選りすぐりの看護師をそろえ、管理者からスタッフへ指導する場面は少なく、各々自律した仕事ができていた。師長とスタッフの関係性も良好で、5床の緩和ケア病床利用患者に対しても、スタッフは自分達が思う緩和ケアを実践することができ緩和ケアに自信を持っていた。

4月より特別病棟から緩和ケア病棟に移行することになり、師長・主任、一部スタッフで開設の準備を行ってきた(ベテランスタッフAは含まれず)。意向調査を実施し、スタッフ全員が緩和ケア病棟で頑張りたいという意思を確認し、人数配置もそのままでスタートした。しかし緩和ケア病棟が開院したと同時に、入院して数時間で亡くなる患者や終末期せん妄が強く、常に付き添いが必要な患者、悲嘆が強い患者や家族などが次々と入院し、特別病棟でできていた看護が提供できなくなり、スタッフは看護師としての不全感が強まっていった。

7月から8月、私は外部研修のため、部署不在であった。研修が終了し、部署に戻った際、ベテランスタッフAが中心となり、スタッフが師長に対し、「むかつく」「はあ?」と言ったり、師長を無視したり、睨んだりと感情をむき出しにした対応になっていた。師長はやせて表情がなく、スタッフと関わることをせず、伝達事項のみを伝える対応になっていた。病棟の雰囲気は悪く、建設的な話し合いができず、「すごく嫌だな、スタッフをどうにかしないといけない」と私は思った。

私がスタッフから事情を聴取したところ、緩和ケア病棟なのに、患者や家族の悲嘆や苦痛緩和に十分時間がとれず、身体的・精神的苦痛を緩和し、最期まで尊厳ある生活を支援できない状況が辛いと師長に申し出ても、「協力して頑張ってほしい」「前の病棟ではできていた」「エンゼルケアは変わります」というだけの対応に腹が立ったと話した。私は「そういう怒りの感情とか、辛いこととか理解できるから、一緒に考えて解決していこう」と声をかけ、一つひとつ対応していった。師長に対しても「師長の言っていることをスタッフにおろすので、ちゃんと全部私に話してください」と声をかけ、上からの決定事項や配置人数の交渉をしていることなど、私がスタッフと師長の間に入り伝達していった。その結果、師長の考えをスタッフに伝えることができ、スタッフの感情を私が受け止め、解消する対応ができ、表面上はうまくやれたかなと思った。しかし、スタッフの感情的な行動に至った理由を師長には直接伝えることはしなかったため、両者の溝は最後まで埋まらなかった。

11月に入り、師長の精神状態が不安定であり、支援がほしいと副部長に相談したところ、たまたま、退院支援部門の師長が退職したため、その部署に師長が移動となり、感情的なスタッフも退職し、私が緩和ケア病棟の師長となる形で事態は収束した。

2.考える知性と感じる知性

 自分が当事者ではない状況のなかで生じていた問題状況に主任としてどういう役割を発揮するべきかを問われる事例であった。

師長とベテランスタッフAとその取り巻きスタッフの問題に対して、主任が感情を受け止める行動はよかったが、間を取り持つ形で収束を図り、双方に問題の直面化をさせなかった解決方法は適切でなかった。緩和ケアがうまく行かない理由が環境要因と思っているスタッフと、提供するケアの質の低下に対する戸惑いがあるベテランスタッフAが感じている問題は質的なちがいがあるが、報われない気持ちが共鳴し、影響力のあるスタッフAに付いていく形でスタッフが感情的な行動に至っている。

主任は問題発生時不在であったことから、事のいきさつを見ていない。この場合は、問題を認識した当事者通しを直接対峙させ、感情を言い合える場を調整すべきである。その際主任がファシリテートし、ベテランスタッフAやその他スタッフが感情的になったきっかけを聞き出し、師長の思いや考えも自分の口から説明してもらう。それから、感情を整理し、「考える知性」で問題の本質をみんなで探していく方法をとるべきであった。

本事例で主任として果たす役割は、スタッフと師長が率直に意見を言うことができるような場面を設定しファシリテーターとなることである。影響力があり、問題可決能力があるベテランスタッフAに仕事を任せることで、スタッフたちを巻き込んだ対策を考えることができたはずである。

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