信頼する副主任の感情の源泉を探る看護課長(Gチーム)

1.事例紹介

 看護課長である私は、夜勤加算の算定のため、7月に中途採用したばかりの看護師に夜勤をさせるよう看護部長から指示を受けた。私はそのことを副主任に伝えると、いつも穏やかで協力的な副主任が、「なんで何もできない人を夜勤に入れるんですか。それで夜勤加算が出るんですよね。」と興奮して矢継ぎ早に言ってきた。周囲には他のスタッフが数人いて、聞いていないふりをしているようだった。私は副主任の訴えを聞きながら「周囲にスタッフがいる場所で迂闊な発言をしたら誰か傷つくかもしれない。」「まずいな。」「副主任は少しヒートアップしている。」「どう返そうかな。」といろいろ考えた。そして、感情的な発言をしてはならないと判断し、淡々と「何もできないってことはないよね。体位交換もできるし、注入も吸引もできるでしょ。」と話した。副主任は、「そんなこと看護師じゃなくてもできます。」と言い放った。

 その後、副主任が話しかけてきて、「やるしかないんですよね。みんなでがんばります。」と言ってくれた。私はほっとしたが、あのときの副主任の突発的な発言は、周囲のスタッフへの影響が大きく、どのように副主任の感情と向き合ったらよかったのか悩んだ。

 

2.考える知性と感じる知性

 副主任のような穏やかで協力的な人から突然批判的な言葉を返されて戸惑った。どのように副主任の感情に向き合ったらよかったのか。いつも協力的という認識は、多少の無理難題を受け入れてくれるという甘えのような感情が前提にあるのかもしれない。もしくは、私と副主任の関係に単に強い信頼感があるのかもしれない。しかし、「なぜ副主任が感情的になったか」を推測してみたい。

 副主任は時間外勤務が多く忙しくて疲れていたのかもしれないし、中途採用者の夜勤指導が負荷される苦しさや辛さを私に訴えたかったのかもしれない。いろいろと想像したが、やはり実際に話し合わなければ副主任の感情はわからない。副主任と話し合うと次のような副主任の感情がわかるのではないか。

 副主任は「どうしよう、課長に口答えしてしまった。」「まずいよな。」「でも私やスタッフの辛さをわかってないよ。」「毎日精一杯で余裕がないのに、さらに夜勤の負担を増やすようなこと言うから。」「いつも協力すると思ったら大間違いだよ。」その一方で、「でも、課長もきっと部長から言われたんだろうな。」「加算をとらないといけないのはわかるけど、もう少し私たちの状況を理解してほしい。」「スタッフは加算なんてよくわからないし、ただ単に“さらに苦しくなる”って思う。でも、そうなったら課長の立場も苦しくなるよなぁ。」そして、「自分がスタッフと課長の間に入ってうまくやるしかないんだろうな。」「いつもそうなんだよね、でもこれが主任の役割なんだからしょうがないよな。」

 感情的な人に出会ったとき、冷静になる時間をもって、あのときはなぜ感情的になったのかを会話し、感情の源泉を捉えるとよい。考える知性が感じる知性に耳を傾け、よく話を聞くことが大切である。

 

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