第5章「人の強みをみつける」当日の様子

第4章「効果的な会議」

秋の訪れとともに肌寒くなった10月22日、第5回看護管理塾を開催いたしました。今回のテーマは、「人の強みを見つける」でした。

導入にあたり、井部塾長より、「30代の薬剤師さん」とのエピソードが紹介されました。それは、耳鼻科で診察を終えて、調剤薬局でお薬を出してもらうときの体験です。中堅とも思われる30代の薬剤師さんが患者さんと積極的にコミュニケーションをとろうとする一方で、会話らしい会話が続かず、逆に患者側から助け舟を出すことになったということです。薬についての説明は得意と思われますが、コミュニケーションはそれほど得意ではない様子で、その薬剤師さんから発せられた言葉はたった一言「いかがですか」だけでした。保険点数を見ると、薬剤指導料50点と記載されていて、たった一言「いかがですか」で500円か、といろいろと示唆を含んだ話がありました。そして最後に、看護師の皆さんはコミュニケーションを得意とする人が多いと思われますが、今日はその強みを取り組んでいくということへの導入をしていただきました。

その後、今回、担当させていただいた伊藤から、強みの点検をさせていただきました。すぐに強みがスラスラと書き出せる人、なかなか書き出せない人といらっしゃいました。全体的には、やや自らの強みを自覚している人が少ないという印象でした。その後、強みを自覚することの重要性をピーター・ドラッカー先生のお言葉をお借りしてご紹介しました。
反面、強みはなかなか自覚されないのも特徴です。なぜなら、人の意識として、完成されていない状態を見ると、あるものよりもないものに意識が向くという傾向があるからです。これは自分自身に対してそうであるように、他者にも同様に見る傾向があります。たとえば、部下や同僚がそれぞれに強みをもっていたとしても、足りない部分に先に目がいってしまうものです。そのため、足りない部分にいったん目をやると、いい部分が目に入らなくなることがあります。そうなると、どんどん足りない部分、いわゆる弱みが氣になり、そればかりが拡大されて見えてしまうということがあります。これは、自分についても同様です。
では、どうしたらいいのか、ということですが、まず自分自身から取り組むことです。自分の強みをまずはしっかりと自覚する、それが出来てはじめて他者へ還元されます。とりわけ、上の立場に立つ人ほど、このことが重要なのですが、ついつい、タスク指向、結果・成果指向が強すぎると、自分に厳しくなってしまいます。その結果、自分の足りない面ばかり常に考える傾向にあります。あるいは、自分に優しくできない状態です。そこで、まずは自分の強みをしっかりと認識するということの大切さを紹介しました。

一方で、強みはほとんど自分では自覚していないものだったりします。なぜなら、強みは、大抵、意識しなくてもうまくできてしまっているために、本人にとっては自覚がないからです。そのため、第三者からの指摘が有効です。第三者に指摘されても、本人は自覚がないので、あっさりと、「いいえ、そんなに大したことではないです」と否定してしまうこともあります。こうした強みにしっかりと意識を向けて、強みを伸ばし強化していくことは大変に重要なことです。とりわけ、マネジャーが自分の強みを自覚していないと、他者の強みにも目を向けることが少なくなり、ほめないマネジャーになります。マネジャーが部下をほめないでいると、部下はさらに自分の良い点に氣づかないままになります。一方で、マネジャー自身が自分の強みを十分に自覚し、自己肯定を十分に持っていると、他者に対しても積極的に良い点を見つけて褒めるようになります。そうなると、部下は自分の良いところを自覚し、さらに頑張ろうという意欲が向上します。

強みを自覚するためには、他者からの指摘や、診断の活用や、自己の棚卸しが有効であるということを紹介しました。その後、チームで各人の強みを発見する実習を行いました。ジャックゼンガー氏の「リーダーシップコンピテンシー」を活用して、強みを指摘しあいました。自己認知とグループメンバーからの指摘が共通している人もいれば、かなり違ったという人もいました。自分で認識していなかった強みが明らかになっていた人もかなりいらっしゃったように思いました。もしかしたら、職場でも同じように、自分では自覚していないけれど、他者からは素晴らしい強みとして評価されていることが意外と多くあるのかもしれません。苦手だと思っていることほど、そこに注意を払ったり、努力をしているために、第三者からみれば、強みに映っているということもよくあります。機会があれば、職場でも同僚の方達とこの実習をやって実際の職場でどのように見られているかを発見していただきたいと思います。
他者については、自分の強みと異なる強みを持っていると認識しづらいというお話もさせていただきました。たとえば競争的な人から協働的な人を見ると、「弱々しい」と映ったりすることがあるのが一例です。自分の価値観だけによるのでなく、いろんな視点から強みを見ていくことの重要性をお話ししました。

本日のワークでは、「苦手な相手に対する対処方法」を検討しました。苦手な相手を一人選び、なぜ苦手なのかを検討し、第三者の視点から、その人はなぜそのような言動をするのかを検討し、強みを生かして対処する方法を検討しました。この実習においても、違った視点から見るのがなかなか難しい様子の方がいらっしゃいました。相手のことを一面的にしかどうしても見ることができず、第三者であるグループメンバーからいろんなアドバイスがあっても、なかなか受け入れられない様子も見られました。結局、思考の限界は行動の限界です。管理者がどれだけ人に対する許容度を増やしていくか、さまざまな人がやってきても上手にマネジメントしていけるかは、大変に重要なことです。

また、中には、例題を出しても、詳細まで提供することへの抵抗があったのか、事例として、掘り下げることができず、一般的な結論で終わってしまったグループもあったようです。この点については、非常にもったいないと思われました。せっかくの学習の場が学習が深まらないことになってしまうからです。ここではオープンに話し合っても、大丈夫という信頼がなければ学習が深まっていくことはありません。次回以降の参考にしていだたければと思います。管理者がみんなから好かれようとしすぎてもうまくいきません。また、摩擦や抵抗を避けようとしすぎてもうまくいきません。相手をよく知り、強みに焦点をあてていくことで、今までとは全くちがった解決方法が導き出されます。今後も、この観点から他者とのかかわりに生かしていただければと思いました。全体としては、活発なやりとりが見られ、第三者の意見を聞いて、目から鱗といった反応をされている人たちが多くいらっしゃったように感じました。今後に生かしてくださることを願っています。

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