第7章「イノベーションを起こす」
クリスマス前のあわただしい日曜日でしたが、皆さん風邪などひかず、元気よく参加されたメンバーが多かったことはなによりです。
さて今回のテーマは“イノベーションを起こす”でした。
冒頭で塾長からオープニングで「組織で生きる:管理と倫理のはざまで~藤原裕美子 著」の紹介がありました。
1.4つのアイデンティティ(個人・看護師・組織人・管理者)
2.管理者に求められる17の道徳的要求
なかなか面白い本ですから読んでみて下さい。
人間は社会的な動物ですので「仕事をする&成果を出す」前に「社会で生きる」事をしなくてはいけません。家族・ご近所・コミュニティ・会社組織・病院組織・地方・国・・・色々な場で生きるわけですね。難しいかもしれませんが、本来その術を人間は持っているものと私は信じています。如何でしょうか?
冒頭のレジメの表紙・・・スーツケースの歴史ですが、人類は5500年の間「車輪」というものを発明しながら、趣味の様に重い荷物を持ち続けたわけです。この比喩は、「私たちの身近にも、もっとたくさんのイノベーションのヒントがある」または「”荷物は手で持つものだ“と思い込んでいた」というものでしょうか? つまり私たちはすでにイノベーションの場所や瞬間があるのに“アイデアへの気づきや思い込みを外すことが見えていないだけ”かもしれません。
◆イノベーションの定義
イノベーションをシュムペーターは「創造的破壊」と言い、ドラッカーは「顧客価値の創造」と言いました。
看護管理者がどのように組織で、病棟や職場でイノベーションを起こすのか?
もちろんそれも大事ですが、今回は “Innovation as Usual ” つまり日々の仕事のなかにイノベーションは潜んでいる。その潜んでいるイノベーションを部下が起こすことを支援する人が看護管理者(Innovationの設計者としての看護管理者)であるという位置づけでワークショップをProgramしました。そして、イノベーションの定義を「昨日とは違う行動によって、成果を生むこと」とここでは定義しました。しかし実際にイノベーション行動を起こすのにはその前提となる考え方の枠組み・箍(たが)・パラダイムが変わらないとイノベーションは起きないのですが・・・・
◆S字カーブ(イノベーションの場所を見つけるには、どうしたら良いのか?)
我々の仕事の成果・やり方・仕組みやシステム・そして考え方の前提の中で、時間と経過と伴に成果が停滞している、機能していな、関係があまり変わらない・・・等々、いわゆるS字の頂点に来ている部分があれば、それはイノベーションが起きる可能性がある場かもしれません。
そして、そのS字の頂点に来ていそうな事柄の〝前提となる我々の枠組み・箍・思い込み・前提・仮説(パラダイム~paradigm)は何か″に疑問を持つことがイノベーションの第一歩かもしれません。
今回の参考書籍の紹介です「イノベーションは日々の仕事の中に」Innovation as Usual
◆日常のイノベーションのための5つの行動 +1
①フォーカス(Focus)②外の世界と繋がる(Connect)③ひねる(Tweak)④選ぶ(Select)⑤ひそかに進める・ステルスストーミング(Stealthstorm)
イノベーションに関する書籍は非常に難解な書籍(技術の変革など)が多いのですが、この本は読み易く、しかも実生活や職場での実践のヒントとなる事例もたくさん掲載されているので、是非とも読んで欲しいと思います。
看護管理者は自らイノベーションを起こすことをも重要ですが、むしろ「イノベーションの設計者」「のべーションをスタッフが起こす環境要因」としての機能が期待されているわけです。そのためには上記の5つの行動が重要で+あきらめないということを推奨しています。今回特に「フォーカス」と「外の世界と繋がる」をご紹介しましたが、それはイノベーションに成功している多くの企業がこの二つの行動を重視しているからです。要はただやみくもに「イノベーションを起こせ」と部下に行っても思考が発散するだけですし、「自部門だけのメンバーで考えろ」といっても、思考は狭い範囲で迷走するだけですから、特にこの2つの行動は重要だと思います。
◆イノベーションの事例
フィリップスのCTスキャナーの事例をご紹介しました
「医療器機の優位性・競争力を上げるのは解像度・スピードである」という考え方・仮説から「医療器機の優位性・競争力を上げるのは“顧客経験価値を理解し解決することである」という考え方・仮説に変えることによってイノベーションが起こったわけです。我々が提供しているサービスを、我々の視点・考え方・仮説・価値観ではなく”顧客“の視点で見てみると(顧客・ステークホルダーの考え方・視点・枠組み)新たな価値が生まれるかもしれません。
例えばマーケティングを考える上で最も基本的なフレームワークのひとつに「マーケティングミックス」があります。いわゆるマーケティングの4Pと呼ばれるものです。
製品(Product)/価格(Price)/流通(Place)/販促(Promotion)
これはあくまでもモノやサービスを提供する側からの視点(Product Out)の考え方です。
しかし今日提唱されているのは、これを顧客側からの視点・顧客側からの考え方で見てみよう(構築しよう)というものです。そこから新しい顧客価値を創造しようとしているのです。つまり、この新たな視点「4C」はマーケットイン Market In)の発想とも言えます。
(プロダクトアウト=4P⇒マーケットイン=4C)製品(Product)→顧客価値(Customer Value)/価格(Price)→顧客にとっての経費(Cost)/流通(Place)→ 顧客利便性(Convenience)/販促(Promotion)→顧客とのコミュニケーション(Communication)
顧客から考える(提供側から考える前提を変える)ことによって新たなイノベーション(顧客価値)が生まれるということです。
◆Workshopイノベーションを誘発する為に「顧客の新しい経験価値を生み出す」
1.イノベーションの設計者を体験する
2.顧客の経験価値の理解(顧客を取り巻く前提となる考え方・価値観を抽出する)
3.日々の仕事の中でいかにイノベーションを起こすかを考える
「85歳の高齢患者」をケースとして、その患者を取り巻くステークホルダーの視点から
1.それぞれの前提となる考え方は何か?(現状)
2.そのあるべき姿は何か?(あるべき姿・未来図)
を抽出して、変革の課題(イノベーションのテーマ)を探ってみました。
この考え(アプローチ)方は、MITのピーターゼンゲ教授が「学習する組織の5つのコンセプト」
1‐システム思考 2‐マスタリー 3‐共有のビジョン 4‐チーム学習 5-メンタルモデル の中の「チーム学習」でも取り上げられ、チーム学習にとって重要なことは“ディスカッション”と“ダイアローグ”という2通りの対話法を上手く組み合わせることだ。ディスカッションとは「将来に意思決定のために最善の選択肢を絞り込むこと」、ダイアローグ(対話)とは「単なる情報のやりとりではなく、話し手と聞き手とが理解を深めながら、互いに共感や意識・行動の変化を引き出し合う創造的なコミュニケーション」である。その前提となる仮説は仮説=すべての人がそれぞれ違うという想定に立っていて、相互理解というのはほとんど幻想にすぎない」というものです。
つまり、自分たちは暗黙の仮定(前提)にもっと意識を向け、会話をしている相手・対処している相手は違う前提に立っているかもしれないことに気づく必要があるというわけです。
今回のWorkshopを通じて、様々なステークホルダー(利害関係者)が持っている前提となる仮説や価値観はそれぞれ違った立場・考え・価値観・仮説立っていることに気づいたことだと思われます。(Workshopでこの前提となる仮説や価値観を言葉にするのはなかなか難しい事でしたが・・・・・)
我々は問題や課題が発声すると、どうしても活動思考的に「どうしたら良いのか?(How to do)」
をやりがちですが、「どうしたら良いのか?」の前に、「何でだろう? その前提は?その行動・言動・意思決定の背後にある考え方や価値観は?」と視点を変えていくことが出来れば、そこが病院組織や部門・病棟におけるイノベーションの第1歩に繫がることと確信しています。
『輪になって座り、焚き火に向かって話しかける時、対話は一番よく機能する』
1/fゆらぎの法則 みなさんはご存知ですか?

koga

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