リーダーナースの沸騰した感情を受容する看護師長(Iチーム)

1.事例紹介

 看護師長である私は、2年前に病床数と残業の多い内科病棟に異動した。その病棟は退職者が少なかったため、退職者の多い他病棟にベテランスタッフが異動していった。4月に新人6名を迎え、例年通り辛い3か月が予想された。しかし、上層部から「新人は5時で帰せ、現場を整えろ。」と指示され、現場スタッフの不満が募っていた。

 あるとき、新人指導ナースが「新人がなかなか育ってくれない、とても疲れる、前は早く帰れたのに。」とスタッフステーションで不満を漏らした。新人指導のため超過勤務が多く疲れているようだった。その場の空気が悪くならないように、そして少しでも新人指導ナースを励まそうと思い「今はふんばりどころだからがんばろう。」と伝えるが、新人指導ナースやその場にいた他のスタッフたちは腑に落ちない様子だった。そのとき、リーダーナースが「ただがんばれ、がんばれ言って、こんなんだから退職者がでるんだよ」と大声で叫んだ。

 リーダーナースは「こんなにがんばっているのにもっとがんばれって言うのか。」「励ましてほしいわけじゃない。」「この状況を改善してほしい。」「毎日遅くまで仕事して帰って寝るだけの生活はつらい。」「新人教育が必要なのはわかっているけど限界だ。」と怒りを表出した。

 私はリーダーナースの不満の叫びを黙って聞いていた。そんな言い方をされるとは思っていなかったので驚いた。新人指導ナースもリーダーナースもその場にいた他のスタッフも全員が私を責めているような雰囲気であった。どうにかしたいがどうにもできなくて、スタッフの負担が減らせないのは私もつらいのに、ストレスのはけ口にされて腹立たしさを感じた。自分を守りたいという思いも生じた。

 三日後、私はリーダーナースと面談をした。リーダーナースは「暴言を吐くつもりはなかったが、頭に血が上ってしまい思わず叫んでしまった。」と気持ちを打ち明けた。そして号泣し、「師長が一番働いていて、一番遅くまでのこっているのにあんなこと言っちゃって」と述べた。リーダーナースの思いを聞き、感情を吐き出させないとうまくいかないこともあると私は思った。リーダーナースが感情を爆発させたことで、これまでを振り返り私自身が反省する機会になった。

 

2.考える知性と感じる知性

 とてつもなく大きな感じる知性をぶつけてきたリーダーナースに対して師長は冷静に対応し、時間をおいてリーダーナースが冷静な状態になれる場をつくっている。「あのときはどのような感情だったのか。」と質問を投げかけて話し合い、リーダーナースの感情を考える知性で冷静に扱おうとしている。

 ヒートアップしたところで感情を突くようなことはしない方がよい。もし師長が、「それってどういう意味なの。」とか「なんでそうやって叫ぶの。」と感じる知性で言葉を返したら、それを聞いたスタッフは行動や感情を否定されたと受け止めてしまう。中には、師長に怒られているという感情をもつ者もいるだろう。

 感じる知性を爆発させた相手には、「どうしてそういうことを言うのか。」といった考える知性で反応するのではなく、感じる知性をそのまま受容する。時間をおいて話し合う機会をもち、その際に考える知性で対応すると効果的である。

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