1.事例紹介
各施設の師長、その複数の施設をまとめた地域統括師長である私、さらに私の上司である本部長が参加している会議での出来事であった。各施設の師長が、「自施設の今求められる変革」について順番に行動目標を発表していた。そのうちの一人が発表したときに本部長がその師長に対して激しい怒りを表出した。「あなたのところはだめなのよ。だからあなたはだめなのよ」と、一方的にその師長の人格を否定するような発言があった。私は、怒りを全面に出した本部長を見たことがなかったので驚き、ショックを受けた。また「なぜその師長を、他施設の師長がいるこの場で責めるのか」と怒りを感じた。さらに、上司である私も怒られているようで悲しかった。場の空気は本部長の発言により一瞬に凍りつき、静まりかえってしまった。その後の発表者にも影響を及ぼした。そのまま会議は終了した。会議の後、参加した師長たちから「辛い、もう参加したくない」と言われた。3日間ひきずった。
2.考える知性と感じる知性
地域統括師長である私は直接怒りを表されたわけではないが、本部長の激しい怒りを間接的に受け取った。さらに会議に参加しているメンバーそれぞれも、怒りに対して感じる知性で反応したため緊張した場となった。そのまま誰もリセット出来ず、会議は終了してしまった。会議の目的を達成するには雰囲気をリセットしたい。その方法としてユーモアがある。今回の事例では、一瞬「間」を置き、回りを見渡しながら、ふっと「場が凍りついてしまいました。ね?」と場全体に向けて感じたことをつぶやく。そして「私も怒られちゃいましたね。けど、怖すぎました(笑)」などと、言いまわし、表情、しぐさ、声の大きさに注意しながら言ってみるのはどうか。すると場のメンバーも自分の感情に気付き冷静になれ、言われた上長も「怖かった」と言えるかも知れない。また本部長も「ヒートアップしすぎちゃったかな」と冷静になれ、新たな場の雰囲気が作られたかも知れない。
ユーモアは緊張を和らげ、信頼関係や親密さを生み出し、チームを活性化させる効果がある。普段からコミュニケーションの手段に取り入れていこう。相手との意見の食い違いにより、対立や険悪なムードが漂う場面や会議に参加することもある。ユーモアを効果的に駆使できる冷静さや余裕を持ち、場の雰囲気を見極めつつ、自身や相手の意見を聞き、議論が出来る百戦錬磨の管理者を目指そう。
会議の場の雰囲気は参加者が作り、共有している。また常に変化している。笑いは1つの緩衝材になって機能する。怒りや対立の雰囲気に巻き込まれないで、「ふっと」ユーモアを、怒りを吹き飛ばすぐらいの「笑い」を提供することで場の雰囲気が変わり、冷静になれることがある。参加者全員が冷静になれる瞬間、「感じる知性」に圧倒されないように、感情的にならずに感情を表現することである。