第3章「感情の源泉を扱う」担当 井部俊子

 当日は2名の欠席がありましたが、梅雨明け寸前のいい天気でした。                                                                     

 塾長あいさつで山田さんは、介護福祉士と看護師の協働についてどう思うかと問うていました。

 13:40-14:00は、第2章「マネジメントに取り組む」のふり返りの時間としました。各チームはにぎやかでした。

 14:00‐14:50は、私がパワーポイントを用いてレクチャーをしました。私は通常、看護管理塾では事前課題を課さないのですが、昨年の経験から、看護職は「感情」を記述したり表出することが苦手であると判断して、ウォーミングアップのために、2つの資料を事前課題としました。ひとつは2008年度と2009年度に作成した事例集に目を通してもらうこと、もうひとつは以前に私が「看護のアジェンダ」(第140回)に書いた「感情表現としての”からだことば″」を読んでもらうことでした。レクチャーの始めに、これら二つの資料に言及して、感情の源泉に誘い(いざな)ました。からだことばを用いることによって、感情をより適切に強く表現することができるのではないかというのが私の持論です。

 続いて、二種類の知性(考える知性と感じる知性)を説明し、感情は理性にとって、理性は感情にとって不可欠なパートナーであることを強調しました。なぜ、感情と理性は何かにつけて対立するのか、答えは脳の進化の歴史にあることも述べました。 次に、感情が人や組織に与える複雑な効果について、「感情の理論」(入山章栄著,世界標準の経営理論,第22章,ダイヤモンド社)から引用して6つの法則に言及しました。感情のディスプレー効果の代表は「笑顔」であるといいます。サーフェス・アクティングとディープ・アクティングの感情処理術は心得ておくと使えると思います。

 今回のレクチャーで新たに採用したのは、「職場での物言いに傷ついた時の対処法」(エイミー・ギャロ,ハーバード・ビジネス・レビュー,2023年6月号,44‐53頁)です。「相手が無礼なふるまいを意図したかどうかにかかわらず、あなたが抱いた感情は正当なものだ」、「自分が影響力を持つ立場にあるならば、沈黙のリスクは大きい」ことや、「場合によっては、そのままにしておくという決断が賢明な対処法になることもあるが、それは自分の感情を抑え込むべきということではない。」などは名言だと思います。さらに。「『私』を主語とする文を使って、自分がどう感じているかを説明し、相手に自分の立場を考慮するように促す」ことや、「『なぜ』ではなく『何』から始めると食ってかかるようにきこえない」と言います。また、無礼なふるまいをされた時に使える定番のフレーズも紹介しています。

 15:00‐16:00のチームでのワークは、「無礼な発言をされた時にどのように対処したらよいか」をテーマに各人が体験談を語り合いました。チームのなかで最もインパクトの大きい事例をひとつ選び、5分の全体での発表を設けました。  

 16:00‐17:00:CCA3210教室内を移動しながらの発表はもりあがりました。発表5分を厳守したため、途中で切らざるを得ない場面もあり、ウォーと歓声があがりました。「無礼な発言」は実に多様であり、看護師の感情労働の過酷さが伝わってきました。各チームの発表事例はホームページで確認できます。

 本日の経験は、「看護師は感情を語ることが苦手」という私の先入観を払拭させてくれました。成功の要因は、「職場で経験した無礼な言動や小ばかにしたふるまい、意地の悪い対応」などと具体的な問いかけをしたことであると自己評価しています。

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