第1章「出会い」当日の様子

若葉をくぐる風がさわやかな5月21日土曜日、築地の聖路加国際大学4階の教室で、2016年度看護管理塾「看護ものがたり~4Seasons~」が開講しました。
今年度は59人の方が登録されました。遠くは九州から通ってこられる方もいます。開場とともに、やや緊張した面持ちでひとりふたりと受付をすませチームごとにセッティングされたテーブルに着いて資料に目を通しながら開始をまっておられました。主催者の私たちも新たなスタートに緊張しつつも期待で胸を膨らませてお迎えしました。

オープニング~ようこそ看護管理塾へ
井部塾長から、プログラムの主旨が説明されました。また看護管理塾を主催する聖路加国際大学が1902年に宣教医師ルドルフ・トイスラーによって創設されてから今に至るまでの沿革が説明されました。続いて、ファシリテーターと運営スタッフが紹介されました。

序章
看護管理者は自分たちの日々の実践を通して気づき学んだ実践知を持っています。講師の古閑からこの看護管理塾では単に知識や理論を教わるのではなく、ナラティブを通して実践知を形式知にしていく、つまり自分たちの実践から自分たちの実践に役立つ看護管理のセオリー(理論)を生み出していくことめざすと説明されました。

出会い
第1章「出会い」では、看護管理者が体験する様々な「出会い」について考えました。「出会い」をよい「出会い」にするためのマネジメント方法について探求することが学習の目標でした。この第1回目のセッションは、全員の参加者にとってまさしく「出会い」です。今ここで、自分たちの体験している感情や思いをみつめ、「出会い」で大切なこと、よい「出会い」を生み出すマネジメントを、ワールドカフェの方法で探求していきました。各ラウンドでの問いは、第1ラウンド「出会いで感じること、考えることは?」、第2ラウンドと第3ラウンド「出会いで大切なことは?」、第4ラウンド「よい出会いを生み出すためのマネジメント方法とは?」でした。

第1ラウンドから、10のテーブルで和やかな対話が始まりました。 トーキンググッズを片手にもったり、両手でぐじゅぐじゅと揉みながら、自分の思いを表現し伝えようとする姿がみられました。最初は「不安です。」と遠慮がちに話しておられましたが、ファシリテーターの「何が不安なのですか?」の問いに、地方の小さな病院で仕事をしているので、東京の聖路加に来ること自体が不安だったこと、あるいは自分のようなものが他の参加者とうまくやっていけるかが心配だったなど、より内省して語られるようになりました。一方でメンバーは語られる言葉に熱心に耳を傾け、うなずきマジックで書き留めていました。ラウンドが進行するにつれて、あちこちのテーブルで笑い声や新しい気づきに感動する声があがり、大いに盛り上がってきました。テーブルに広げられた鶯色のテーブルクロスは、色とりどりのマジックで書かれた言葉で埋まっていきました。

最後のラウンドは、まず一人ひとりがよい「出会い」をうみだすためのマネジメント方法についてポストイットに書き出しました。「マネジメント方法の意味がわからない。」という発言があり、「よい出会いを生み出すために看護管理者はどのような行動をとればいいのか、あるいはどのような姿勢や態度でいればいいのか」と問いを明確にしてワークを開始しました。皆、黙々と自分の気づきや考えをポストイットに書き出しました。チームでのワークに移ると、ひとりが自分のポストイットを読みメンバーに説明すると、共感の声があがり、「わたしも。」と次々と同じ内容のポストイットが模造紙の上に出てきました。内容の似たものを集めてグルーピングをする過程では、自分たちの書いたポストイットの内容の意味を吟味し、さらに気づきを深めていく姿がみられました。

熱心に話し合いを行うあまり、グルーピングが完了しなかったチームもありました。全体での共有では、井部塾長からよい「出会い」をうみだすマネジメントを考えることについて、図を示してコメントがありました。「出会い」を「よい出会いにする」ために「マネジメントする」。したがって私たちが「よい出会い」とは何かをまず考える必要があることに、はっと気が付きました。塾長の板書でご確認ください。

最後に、吉田からJ.R.Gibb*の「すべての社会的相互作用で生じる4つの基本的懸念」の理論を紹介しました。時間の関係で説明不十分でしたので、補足を加えて下記に記載します。4つの基本的懸念の第一番目は自分は他の人に受け入れてもらえるのだろうか、集団のメンバーになれるのだろうかというッ受容の懸念。つぎに自分の感情や思いが他の人にどう受け止められるだろうか、グループの中で互いによい感情でいられるだろうかという、データの流動的表出における懸念。そして他の人やグループの目指すものと自分の思いが異なるのではないかという目標形成の懸念。最後に前述の懸念のあるなかで他の人とどのように関係をもったらいいのだろうか、グループの中でどういう役割をとったらいいのだろうかという統制次元の懸念です。これらの懸念は人間が共通してもっている「恐怖」や「不信感」から生まれてくるもので、人間はこれらの懸念を持つからこそ、それを減らそうと動機づけられ他者との関係をつくる活動を生み出すといいます。「出会い」の場では、前述した懸念をそれぞれの人が持っています。よい「出会い」をつくりだすには、看護管理者は、自分自身を含めてその場に存在するすべての人が抱く「恐怖」や「不信感」を可能なかぎり減らしていくかかわりが求められます。開放的で受容的なチームの風土づくりも重要でしょう。

第1回目のセッションは皆さまにとって、「よい出会い」となりましたでしょうか?「よい出会い」とはその後の成長につながるものと発言したチームがいました。これからの1年間、ともに学びを重ねて成長してまいりたいと思います。

*J.R.ギッブ. 10 信頼関係形成のための風土. L.P.ブラッドフォード, J.R.ギッブ, K.D.ベネ編.
三隅二不二監訳.(1971).感受性訓練 Tグループの理論と方法.日本生産性本部,pp367-408.

2 のコメントが “第1章「出会い」当日の様子”にあります

  1. 出会いで「緊張する」と言った時、どうして緊張するのかと問われ、あまりそこに着目してきていない自分に気づきました。いつもこういった場面で話をしながらも自分がどういった立ち位置にあるかが気になるところがあります。そのことが「すべての社会的相互作用で生じる4つの基本的懸念」のお話で納得しました。

  2. warahanaさん
    フィードバックありがとうございます。初回の担当者として、参加者の方が自身の体験と理論とを結びつけてなるほど納得されたというのは、とてもうれしいです。いつも、どうやったら皆さんの気づきを触発することができるだろうか、どうしたら学びが生まれる場にすることができるかと悩みながらプログラムを企画し運営しています。コメントで励まされました。
    warahanaさんは、ご自身の気づきをどのようにマネジメントに活かしていかれますか?

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