第2章 マネジメントに取り組む

 はじめに、山田塾長より、某大学病院での入院体験について話がありました。
入院当日、山田さんが病棟に到着すると、出迎えたのはクラークで、開口一番「お風呂入りますか?」と言ったそうです。どうやら、病棟内の浴室使用のための予約をとる必要があったようで、その確認だったそうです。山田さんが、浴室使用の予約表をはさんであるバインダーを見ると、紙の大きさに合っていないサイズで、しかも、すり減った短い鉛筆が紐でくくりつけてあったそうです。山田さんが鉛筆について指摘すると、クラークは「そんなもんですよ」と答えたそうです。ただでさえ、患者は不安な気持ちで入院するのに、山田さんは、このクラークとの最初の出会いによって、益々不安な気持ちにさせられたそうです。看護管理のあり方について、考えさせられるお話でした。
 
 続いて、倉岡より、中原淳著「駆け出しマネジャーの成長論」にもとづいて、詳しく説明しました。
本の帯には「鍵はプレイヤーから生まれ変わること!」とあり、この言葉はマネジャーとしての仕事を考えるうえで大前提となります。「駆け出しマネジャーの成長論」によると、マネジャーの仕事とは「他者を通じて物事を成し遂げる」であり、「エキスパートとしての自分のあり方を一部捨て、自分以外の人に仕事を任せること」とあります。そのため、部下を動機付けたり、部下が喜んで仕事を引き受けようと思えるように導いたりすることが重要となるのです。看護管理者の方は、自分がやるほうが速いしうまくいく、と思われるかもしれませんが、本物のマネジャーになるには、ここを乗り越えることがとても重要です。

 続いて、倉岡が、経験の浅いマネジャーが直面する7つの課題を説明し、「目標咀嚼」のところでは、受講者の鈴木さんから所属施設での目標咀嚼についてお話しいただきました。鈴木さんの病院の理念は「至誠と愛」です。この理念はとても抽象的であるため、具体的には患者にどのような看護を提供できたら「至誠と愛」にもとづく看護といえるのか、看護管理者は部下に示していく必要があります。鈴木さんの病院の看護部では、看護について語る文化を醸成しようとしているそうです。例えば、看護師から、がんの終末期の患者に対して、患者の思いに寄り添って、なるべく口から召し上がることができるように工夫したという内容が語られたそうです。井部さんは、このことを「患者の思いに応える」と表現していました。このように、看護管理者は、抽象的な理念や方針を一段階具体的にした目標を部署で設定していくことが重要です。

 説明後、配布したワークシートを使って、参加者の皆さんに、それぞれの課題の重要度を5段階で記入していただきました。その後、チーム内で得点の集計をして、受講者全員の投票によって、チームで検討する課題を2つ選びました。選ばれたのは、1位「部下育成」(13票)、2位「目標咀嚼」(12票)でした。
 チームでのワークに移りました。①2つの課題について、現在困っている状況について語り合う、②事例を1つ選び、乗り越えるための効果的な方法を考えて、ポスターにまとめる、ことに取り組みました。ワークの時間は1時間と短く、「部下育成」に時間をとられ、「目標咀嚼」について十分に話し合うことができなかったチームもありました。 

 発表方法は、クロスグループインタビュー形式をとりました。他のチームの発表を聞くことで、課題を効果的に乗り越えるための方法を共有することができたと思います。「目標咀嚼」について、現在、部署で設定している目標を挙げ、具体的にどのような表現に変えれば“咀嚼”になるかを考えられているチームもありました。また、現在の目標をより具体的にするためには、看護管理者が部署で提供している看護の実態や問題点について十分に把握している必要があることも学ぶことができました。さらに、「部下育成」と「目標咀嚼」は強く関連していると気付いたチームがありました。

 第2章での学びを言葉にしてみてください。そして、これからも自分の看護管理実践について、7つの視点から分析してみていただきたいと思います。

コメントされますか?

コメントするには ログイン してください。